【行政手続法5条〜10条】申請に対する処分/努力義務と法的義務【表で解説】

行政手続法

この記事を見ているあなたは、行政手続法5条~11条の「申請に対する処分」の意味がよくわからず悩んでいるのではないでしょうか。

  • 〇〇しなければならない
  • ○○に努めなければならない

といった一見同じような言葉がずっと並んでおり、知識が混乱して覚えづらいですよね。行政手続法の最初に出てくる条文ということもあり、多くの人の最初の壁になることが多いです。

暗記で覚えていくのも良いですが、暗記事項が増えることは本試験対策としてはあまり良い事ではないでしょう。

この記事では、行政書士の私が一人でも多くの方に条文が腹落ちしていただけるように「申請に対する処分」の条文を丁寧に解説していきます。

本記事の内容

・申請に対する処分の解法テクニック

・”暗記”か”理解”かを表で解説

・読み終わるころにはスッキリしてます

それでは早速、解説致します。

「義務」と「努力」に変換して覚えていく

これは、〇〇しなければならない。
あれは、〇〇するように努めなければならない。
と条文通りに覚えようとすると非常に時間がかかりますよね。

まずは、条文を分かりやすい日本語に言い換えてみましょう。

<変換方法>

  • しなければならない  →「義務」
  • 努めなければならない →「努力」

この2パターンに変換していきます。

義務
  • 定めなければならない
  • 公にしなければならない
  • 開始しなければならない
  • 拒否しなければならない
努力
  • 努めなければならない
  • 努めるものとします

このように、
「しなければならないシリーズ」と「努めなければならないシリーズ」を「義務」と「努力」に変換して覚えていきます。

混乱しやすい条文が「義務」なのか「努力」なのかを確認してみましょう。

条文ごとに覚え方を解説します。

審査基準(5条)

(審査基準)第五条
1 行政庁は、審査基準を定めなければなりません。
2 行政庁は、審査基準を定めるに当たっては、許認可等の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない。
3 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、審査基準を公にしておかなければならない。

審査基準を”定めること”と”公表すること”は「義務」になっています。

審査基準とは
申請により求められた許認可をするかどうかの判断基準です。
  例えばこんなとき  
あなたがラーメン屋さんを開こうとした時、行政に営業許可をとる必要がありますよね。
しかし、行政の方で審査基準が定まっていなくて、市のホームページを調べても審査基準が載っていなかったらどうでしょうか。
ラーメン屋を開きたいのに、何に気を付けながら開業準備したらいいか分かりませんよね。また、営業許可の基準が行政に担当者によって違っていたらそれも困りますよね。
そうならない為にも、審査基準とその公表は「義務付け」されているんです。

また、5条2項では「できる限り具体的なものとしなければならない」とも書いてありますので、行政にはより詳細な基準を設けることが求められています。

標準処理時間(6条)

次は、標準処理時間を解説します。

(標準処理期間)第六条
 行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めなければなりません。
これを定めたときは公にしておかなければなりません。
  • 標準処理時間を定めるのは「努力」
  • 定めたとき、公にすることは「義務」

になっていますよね。

標準処理時間とは
事業者から何かしらの申請があってから、その処分決定をするまでにかかる時間のこと。

想像してみましょう
仮に、申請処理時間が義務だとしましょう。「1ヶ月」としましょう。
急に申請が立て込み、1日に200件の申請がきてしまいました。
処理時間を「義務」で定めていた場合、もし処理が間に合わなければ、行政はルール違反したことになります。
行政が可哀そうですよね。そうならない為にも、申請処理基準は「努力義務に留めているのです。
ただし、処理の見通しが立てば処理時間を定めることができますよね。その場合は申請者のためにも公表してください。ということです。

申請に対する審査、応答(7条)

(申請に対する審査、応答)第七条
 行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければなりません。

申請が形式要件に適合しない場合は、速やかに相当の期間を定めて当該申請の補正又は許認可等を拒否しなければならない。

  • 遅滞なく審査開始することは「義務」
  • 申請に不備があれば補正を求めること又は拒否することも「義務」

ここは、割とイメージしやすいかと思いますので割愛します。

理由の提示(8条)

(理由の提示)第八条
行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時にその理由を示さなければなりません。
拒否処分を書面でするときは、理由も書面でなければならない。
  • 拒否の場合の理由提示は「義務」
  • 拒否を書面でする場合は「必ず書面」
  理解して覚えよう  

申請というのは、国民から行政に対する大切な申請です。時には、人生を左右する時もあります。したがって、拒否する時はちゃんと理由を示す義務があります。
また、重要案件は口頭で説明せず書面で説明すべきですよね。

また、理由提示についてはこのような規定もあります。
ただし、要件又は審査基準が数量的指標その他の客観的指標により明確に定められている場合であって、当該申請がこれらに適合しないことが明らかであるときは申請者の求めがあったときにこれを示せば足りる。
初めから、審査基準に「〇〇㎝以上は申請できません」など指数等で示されているものがあるときは申請者から理由提示の求めがあったときのみに示せば足ります。行政も全てに拒否理由を提示していたら時間が足りないのかもしれませんね。

情報の提供(9条)
公聴会の提供(10条)

最後に、9条10条を解説していきます。ここはセットで覚えましょう。

(情報の提供)第九条
 行政庁は、申請者の求めに応じ、進行状況及び、処分の時期の見通しを示すよう努めなければならない。
2 行政庁は、申請をしようとする者又は、申請者の求めに応じ、申請に必要な情報の提供に努めなければならない。

これは申請者から進行状況の問いあわせが来た場合です。

  例えばこんなとき  

申請者から「申請状況どうですか?」「申請に必要なものってなんですか?」という問い合わせに全て対応していたら窓口は混んでしまいます。
行政にも断る権利を与える為にも情報提供は、「努力義務」に留めています。

続いて10条です。

(公聴会の開催等)第十条
 行政庁は、申請に対する処分であって、申請者以外の者の利害を考慮すべきことが要件とされている場合、必要に応じ、公聴会の開催その他の適当な方法により当該申請者以外の者の意見を聴く機会を設けるよう努めなければならない。

公聴会は、関係者を集めて意見交換をする会ですので、
これも9条の情報提供に似ていますよね。セットで「情報提供=努力」と覚えてしまいましょう。

まとめ

解法テクまとめ
  1. 「義務」と「努力」に変換してみましょう。
  2. イメージできるものは理解していきましょう。

コメント

EOM;
タイトルとURLをコピーしました